
昨日の米株式市場は大幅続落となり、幅広い業種を網羅する主要500社構成のS&P500総合株価指数(⇒ファンドマネジャー等の運用評価の目安とされている)は11年ぶりの安値水準に落ち込んだ。
S&P500は昨年10月の高値から51%超の下落率、年初からは49%の下落率となり、年間ベースでは過去最悪を更新している。
同指数構成銘柄のうち、株価が10j未満の銘柄は、20日時点で過去最高の102銘柄に達し、の2002年末(⇒ITバブル崩壊直後で世界成長率は2.4%へ減速))の同51銘柄から倍増している。
株価10j割れの銘柄群には、米オンライン証券のイー・トレード・フィナンシャルや自動車大手3社、アルミ大手のアルコア、ゼロックス、モトローラ、スターバックス――など、かつて優良株として名を馳せた企業名が並んでいる。
こうしたなか、公的資本の注入を受けたシティグループの株価は前日比▲26.40の4.71jと、ついに5j台を割り込んでしまった。
株価の5j台割れは、機関投資家などの投資対象から外される水準でもあり、予断を許さない情勢にあるといえよう。
一方、米債券市場は大幅続伸で、指標となる10年債利回りは3.0025%と約50年ぶりの水準に低下しており、金融危機による信用収縮や世界的な景気後退懸念を背景に“質への逃避”買いが加速した格好となっている。
1ヶ月ほど前に米著名投資家ウォーレン・バフェット氏はNYタイムズに寄稿し、「株価の底入れは市場心理や景気の回復に先行した」、「他人が強気の時は用心し、他人が用心する時に強気になれ」、「コマドリが鳴くのを待っていたら春が終ってしまう」、「現金を溜め込んで模様眺めしていないで、今すぐ保有株式を増やせ」―――などと、米国株の強い買い推奨を行っていたが、野性のコマドリは冬が終らなければ鳴かないのである。
その冬はこれから厳しさを迎えるところであり、「恐怖指数」として知られるVIX指数(ボラティリティー指数)は昨日20日時点で80.86へ跳ね上がり、統計開始以来の最高(最悪)を更新している。
各国の政策当局は厳しい冬を乗り切るために、大胆な金融緩和と財政出動で景気を支えようとしており、昨日はスイス中銀(SNB)が100bpの緊急利下げに踏み切っている。 SNBは、今月6日にも50bpの緊急利下げを実施しているが、ロート総裁は今回の政策について「明確な景気悪化が見られ、これ以上待つことはできなかった」と説明し、金利操作の余地は依然としてあると追加利下げの可能性を示唆している。
SNBによる異例の連続大幅利下げは、世界的な景気後退とデフレ・リスク回避に向けた政策判断と解釈することができ、主要中銀の金利引き下げは「ゼロへの競争」(英エコノミスト)となりつつある。
こうした状況下、日銀は2日目の金融政策決定会合を開催しているが、ボードメンバーには追加利下げの選択肢はないようだ。
前回10月31日の金融政策により、短期金利(無担保コール翌日物金利)の誘導目標は0.30%前後で推移するように20bp引き下げられた。 同時に日銀補完貸付(ロンバート型貸出)による上限を0.50%、当座預金残高への付利を0.10%としたことで、大量の資金供給を行った場合でも短期金利は0.30%を中心に0.10〜0.50%の範囲で推移するような制度を導入している。
日銀は10月の「展望リポート」で、景気の先行きについて上下両方向のリスク要因を点検しながら適切に金融政策を運営するとし、特に経済の下振れリスクに注意を払う必要があるとの姿勢を示しているが、中銀としてなしうる重要な貢献は「流動性を通じた市場の安定維持」であると明言している。
さらに、金利水準を引き下げた場合、金利収入が取引費用をカバーできなくなる結果、金融市場での取引が細り、市場流動性が低下する可能性があるとして、利下げによる悪影響を指摘している。
つまり、金利の引き下げが金融市場の機能を阻害し、かえって資金の流れを悪くするということであり、日銀は政策目標を「金利」から「資金量」に切り替え市場に必要以上の資金を供給することを念頭においているものと推測することができる。 つまり、10月末の金融政策変更により、(市場機能を維持するための)金利をゼロにしない工夫をしており、今後は流動性を供給する量的緩和へ移行するといえよう。
この先には、円売り介入を実施した場合の介入資金の非不胎化を念頭に置いたものと推測することもでき、1j=90円割れの円高のスピードを遅らせる効果を有すものといえよう。
尚、本邦通貨当局が円売りの実弾介入に踏み切る場合は、1j=90円割れの円高が想定以上に早まる可能性が指摘されるが、介入警戒感を上手く利用する場合は90円割れを遅らせることができるといえよう。
当局もこの点は熟知しているはずであり、当面は神経質な心理戦が続くものとみておきたい。
(11月21日 11:00記)