森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

11月19日 11:24 株価連動のRange-Boundで新たな材料待ちに!?

昨日のドル/円は、東京タイムでこそ96.24−96.78円の小幅レンジに釘付けされたが、欧州中盤からは株価の上下動に連動する格好で、96.03−97.42円のレンジで乱高下し、NYクローズは96.88円で着地している。

リスク選好のメルクマールとなっている米株式市場は、割安感からの押し目買いと素早い利食いが繰り返されるといった具合で、結局は安値圏での乱高下に終始し、明確な方向感を打ち出せない状況が続いている。

昨日は、米パソコン大手ヒューレット・パッカードの8−10月期決算が市場予測を上回る増収増益でNYダウ先物が上昇に転じ、クロス円の買いを誘発したが、米11月NAHB住宅価格指数が過去最低を更新するとNYダウは下げに転じ、クロス円も売り一色となった。 このあとNYダウは恒例の引け前1時間の猛烈な買いで急反発し、クロス円も買い戻される格好となった。

「現在の株価水準は割安」との見方が浮上しているものの、買いが続かないのは、米国および世界経済の低迷長期化を背景とするリスク回避姿勢や、審議難航が確実視されている自動車救済法案を巡る様子見などで、積極的な持ち高形成につながっていないといえよう。

米国株の代表的な投資家センチメント・インディケーターであるVIX指数(別名「恐怖指数」)は、10月27日の80.06をピークに、今月4日に47.73まで低下(改善)したが、足元では再び上昇(悪化)に転じ、昨日は一時73.13と10月末以来の水準まで跳ね上がっており、腰の据わったニューマネー流入によるトレンド形成が期待しづらい状況にある。

足元では、経営破たんの危機に直面している米自動車大手の救済を巡る議論の行方が焦点となっているが、ポールソン財務長官は破たんは望ましくないとしながらも、破たん回避に金融安定化法の不良資産救済プログラム(TARP)を使うべきではないとの考えを改めて示している。
 
こうした背景には、実体経済の急速な悪化で住宅価格が下げ止まらず(⇒CME住宅価格先物は2010年11月までの下落を織り込んでいる)、金融仲介機能を担う銀行やノンバンクの資本注入を最優先せざるを得ない事情があるといえよう。 また、自動車産業への救済を認めれば、他の一般事業会社からも同様の救済を求める動きが強まる可能性が高く、モラルハザードを引き起こしかねないとの懸念もある。

何より、財源問題も無視できない。 米財務省が昨日発表したTIC(対米証券投資状況)によれば、9月の長期証券投資を通じた対米資本流入額は662.30億jと、前月から3倍超に拡大していたことが明になっている。 リーマン・ショック(09/15)を起点とする世界的な金融不安が、“質への逃避”という形で最上級の格付けを持つ米国債への資金流入を促す格好となった。
 
とはいえ、未曾有の金融危機と信用収縮に伴う実体経済の悪化により、2009年度の米国債発行(市場性証券)を通じた資金調達額が2兆jに達する可能性が懸念されている。

米債券市場は、中国が4兆元(≒5,860億j)の景気刺激策を発表した今月10日に売られ、長期金利は上昇する場面がみられた。 それは、中国が財源確保のため、米国債を売却する、もしくは購入する余裕がなくなるとの懸念が浮上したためである。 中国政府が敢えて膨大な景気刺激策を発表した背景には、8%のGDP成長を確保し、国内の不満因子を抑える必要性や、G20金融サミットでのプレゼンスを高める狙いのほか、オバマ次期大統領が中国元は意図的に安く誘導していると発言したことに対するけん制との見方もある。 いずれにしても、主要各国は深刻な景気後退のリスクに直面し、財政支出を伴う景気刺激を余儀なくされるため、米国債を購入する余力は限られてくる。

米国債は質への逃避で買われてきたが、誰かが「大様は裸だ」と言い出せば、長期金利の急騰とドル暴落のリスクが一気に高まってくる。 サルコジ仏大統領は、G20金融サミット開催前に「米ドルはもはや世界の基軸通貨だと言い張ることはできない」と本音を吐露していたが、為替問題は何故か麻生首相の「米ドルの基軸体制は重要」との発言しか伝わってきていない。 

TICでは米国投資家が海外投資を3ヶ月連続で引き揚げていることも明らかになっており、ドルの総合的な実力を示すFRB算出の実効為替相場は、8月から4ヶ月連続でドル高基調が続いている。

しかし、海外勢による米国債への質への逃避や米国勢のリパトリエーションが一巡してくると、ドルには下落圧力が掛かることになる。

右グラフ(pdfご参照)は、1990年のリセッション局面のFRBインデックスの変動パターンに現在の値動きをプロットしたものであり、このパターンに従えばドル高は12月まで続くものの、来年1月からドル暴落のリスクが高まることになる。 来年1月以降のイベント・スケジュールを見ると、20日にはオバマ新大統領が正式に就任し、新政権の政策運営(大統領選当時の楽観ムードは消えている頃)が始まる。 1月末にはリーマン・ショック後の金融危機の影響を反映した米10−12月期GDP・速報値が発表される予定となっており、すでに前期比年率4%超の大幅マイナスを予想する声が出ている。 さらに、1月末のFOMCでは日米政策金利が逆転する可能性もあり、政府・日銀は試練を迎えることになる。 

(11月19日 11:35記)

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