
アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。
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足元の主要通貨相場が“不美人投票”の様相を強めるなか、ユーロやオセアニア通貨の自滅により「米ドルの一人負け」の構図が変容、ドルが相対的に買い戻される展開となった。
オセアニア通貨は、英デイリー・テレグラフによる「豪住宅・金融危機は米国より深刻化する」との報道や、金融緩和余地の拡大に言及したボラードRBNZ総裁発言で続落。
ユーロは、ECBが最重要指標の一つに位置付けているユーロ圏・総合景況指数が7月にイラク戦争(2003年)以来の89.5に急落したことや、同・企業景況感指数もほぼ3年ぶりのマイナスに落ち込んだため、景況悲観論の増幅を背景に続落している。
日本円は、鉱工業生産の2四半期連続の減少により景気後退の可能性が高まっているが、クロスベースでの円買い戻し圧力などで対ドルでは伸び悩む格好となっている。
一方、米国では7月のADP全米雇用報告・民間雇用者数が6万人減少の予想に対して0.9万人の増加と予想外のプラスとなり、ドル買い戻しを後押した。 もっとも、同統計の改善により明日の雇用統計のハードルが高められたことになり、この材料をもって持続的なドル買い材料と捉えることはできない。
ところで、昨日は今後のドル相場の行方を左右する重要な政策が幾つも打ち出されている。
より分りやすくいえば、“ドルの信認”を揺るがしかねない“両刃の剣”でもあり、強いドル政策が一段と強化されることになろう。
まず、米住宅公社支援法案を含む「新住宅対策パッケージ」は、ブッシュ大統領が07/30に署名し、異例の速さで法律が成立している。
これにより、ポールソン財務長官は「水鉄砲ではなくバズーカ砲」を手に入れたわけであり、米住宅公社2社に対し、緊急融資や公的資金による資本注入が実施できる体制が整った。
“大き過ぎて救えない”―――。 米議会公聴会では、白紙の小切手を渡すわけにはいかないとの声が聞かれていたが、インディマック・バンコープの破たん劇がスケープゴートとなり、反対派をねじ伏せた。
住宅公社2社の債務膨張が時間の問題であったことは、政府が3月に打ち出した住宅市場安定化策(⇒住宅ローン買い取り額や保有額の上限撤廃など)で分っていたことであり、すべては綿密に計算されたシナリオであり、この機を逃しては公的資金活用に道筋を付けることは不可能だった。
右に添付した表(pdfご参照)は「金融システム安定化策の日米比較」。 日本が不良債権問題に公式に気付いたのは1992年7月であり、ここから住専処理で公的資金を活用する1996年まで4年もの歳月が経過している。
これに対して米国は、過去1年で徹底した金融緩和を行い、戻し減税を柱とする財政政策で景気を下支え、異例のスピードで住宅公社支援法案を成立させ“資本注入”の体制を整えている。
さらに、昨日FRBは今年3月に導入したプライマリーディーラー向け連銀貸出し制度(PDCF)とターム証券貸出制度(TSLF)を2009年1月30日まで延長すると発表、同時に84日物ターム資金入札(TAF)を導入し、既存の28日物を補完することを明らかにしている。
これらは、米政府債務を膨張させるだけでなく、FRBのバランスシートを悪化させることで、ドルの信認を大きく低下させるリスクを孕んでいる。
昨日の米債券市場の続落(⇒金利は上昇)を見るまでもなく、市場は米国の債務膨張を警戒し始めているのである。
事実、米行政管理予算局(OMB)は28日に、米国の財政赤字額が2009会計年度(2008年10月〜)には過去最高の4,820億jに達するとの修正見通しを示している。
そして、米財務省は30日、歳出増や税収減、FRBによる大規模な債務償還に対応するため、10年債と30年債による借り入れを拡大する方針を示している。 来週には10年債170億jと30年債100億jの入札が行われるが、この7−9月期に2回目の10年債リオープン(銘柄統合)入札を行い、四半期の30年債新規入札も行うことを検討しているとした。
米財政赤字の膨張は長期金利の急騰リスクを孕むものであり、米財務省が安定的なリファンディングを促すためには、ドルの信認維持に向けた強いドル政策の強化と、FEDの金利正常化が必要となってくる。
昨日は、SEC(米証券取引委員会)がファニーやフレディのほか証券会社17社の株式を対象に、「裸の空売り」を禁じる措置の適用期限を7月30日から8月12日に延期したと発表したほか、FASB(米財務会計基準審議会)は銀行など金融機関の簿外(オフバランス)資産をバランスシートに反映させるための会計基準変更の実施時期延期を決めている。
市場配慮の柔軟な政策対応ではあるものの、アメリカン・スタンダード(⇒自国に有利に、他国に厳しく)であり、この点からも米政策当局はドルの信認を高める努力を怠ることはできないのである。
(7月31日 11:00記)
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