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森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

07月30日 11:24 ファンダメンタルズは後からついてくる!?

ドル/円は7月4週にテクニカル面での中長期的な強気シグナル(⇒今週の『森レポート』P.7を参照)を2つ点灯、今週は米金融不安再燃をテーマにドル全面安のスタートとなったが、足元ではファンダメンタルズやセンチメントに潮目の変化が生じている。

まず、最も注目されるのはメリルリンチが7−9月期に57億jの評価損を計上するとの見通しを示すとともに、85億j相当の新株発行による資本増強を発表したこと。

メリルリンチは7月17日に発表した4−6月期決算で事前予想を上回る大幅赤字を計上したばかりであり、資本増強は既存株主の保有株の価値を希薄化させる可能性があるため、市場は売りで反応した。
しかし、こうした証券化商品関連の積極的なエクスポージャー(リスクのある持ち高)の圧縮に伴う損失計上は、4月ワシントンG7が金融機関に実施を勧告した「100日以内の課題」に対する回答という意味合いを持つことになる。

つまり、これまでの一時的な損失処理とは異なり、抜本的な損失処理と捉える必要があり、こうした損失拡大は今後の追加損失の発生余地を狭めることになろう。

事実、格付け会社S&Pは声明で「今回の措置で、メリルリンチ社がさらに大規模な評価損を計上する可能性は大幅に低下した」と評価し、同社の格付けに影響しないとしている。

当初は売りで反応した市場も、信用危機の曲がり角が近いとの見方から、金融株は全面的に買い戻される展開となり、ドルを支援する格好となった。

そして、次に注目されるのは米住宅の売買実績に基づいて算出されるS&Pケース・シラー住宅価格指数。 主要20都市圏の5月の住宅価格指数は前月比▲0.9%、前年同月比では▲15.8%となったほか、主要10都市圏の住宅価格下落率は前年同月比で▲17.0%と、1987年の調査開始以来最大の落ち込みを記録した。

今朝の日経新聞は「米住宅価格、最大の下げ」「調整の底は見えず」「金融機関は損失増も」―――などと、悲観一色の論調となっている。

5月に住宅価格が下落したのは、上述したように主要金融機関が「G7−100日以内の課題」に対応するために、差し押さえ物件を一斉に投げ売り処分した影響が反映されているとみられている。

ただ、住宅価格指数は事前予想を若干上回ったほか、20都市中7都市が前月比で小幅上昇となっている。 当レポートでは、前月比の下落率が今年2月をボトムにして縮小していることを指摘したが、昨日の5月データでも改善が見られており、同統計を発表したS&Pは減速が続く米住宅市場にとって「明るい材料になる可能性がある」と指摘している。
 
3つ目に注目されるのは、米大手民間調査機関コンファレンス・ボードが発表した米消費者信頼感指数。 7月の消費者信頼感指数は51.9となり、2007年12月以来初めて上昇している。

先週末に発表されたミシガン大学消費者信頼度指数の改善と歩調を合わせる形で反転上昇しており、市場では底入れした可能性があるとの声が浮上している。

来月以降は、足元の原油相場の大幅安に伴うプラス効果が反映されるため、消費者信頼感はさらに改善する可能性は念頭に置いておきたい。

いずれにしても、米国経済は当局による政策総動員(⇒大幅利下げ・広範なドル安・戻し減税)のタイムラグ効果が表面化し始めているのに対して、ユーロ圏では28日発表の独8月消費者信頼感指数が5年2ヶ月ぶりの低水準を更新し、昨日発表の仏7月消費者信頼感指数は過去最低を7ヶ月連続で更新するなど景況悲観論は一段と増幅している。

今週末には、7ヶ月連続での雇用減少と失業率の上昇が予想される7月の米雇用統計を控えており、ドル買いを躊躇させているものの、雇用関連指標は景気動向と数ヶ月間の時間差を伴って推移する遅行指標であり、事前予想範囲の結果にとどまれば、一段のドル上昇を促すものとみておきたい。

本日は、その前哨戦という位置付けのADP全米雇用報告・民間雇用者数が発表される。

同統計は信頼度が低いといわれつつも、前回6月データでは労働省発表のNFP(非農業部門雇用者数)との誤差はわずか3千人にとどまっている。(⇒ADP雇用報告は民間給与台帳を基に算出されるため、ここに政府部門の雇用増減を加味するとNFPの増減と一致することになる)

そして、本日のもう一つの重要イベントは、米財務省が公表する10年債および30年債の入札条件となり、米債券市場の反応に注目しておきたい。

テクニカル面ではドル/円の『200日平均線』が上向きに転じるタイミングが注目され、先行して上向きとなっている『89日平均線』が『200日平均線』を下から上抜く局面では、新たな動意が生じる可能性に期待したい。

(7月30日 11:00記)

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