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森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

07月23日 11:26 ドル/円、NYクローズで1年ぶりに200日平均線を突破!?

NYダウは米国株の代表的な投資家センチメント・インディケーターであるVIX指数が30.81を付けた7月15日がボトムとなり、昨日までに5.8%の上昇率(NYクローズベース)を記録している。

VIX指数は昨日時点で21.18まで急降下しており、「安定領域」の目安となる20割れが視野に入っている。 これは、地合いの好転を示唆するシグナルとなり、こうした局面では悪材料への反応が鈍くなる一方、好材料に反応しやすくなる。

昨日は米銀ワコビアの四半期決算が市場予測を大幅に上回る赤字を計上したことや減配が嫌気され、同銀株は一時10%超下落したが、新株を発行して資本を調達する計画はないとの発表を受け27.4%上昇している。

また、米地銀の四半期決算もモーゲージ関連の損失が膨らみ多額の評価損を計上したが、破たんを警戒するものではないとの見方から地銀株も軒並み高となっている。

現時点では、金融不安が遠のいたと考えている市場参加者は少数派であるものの、事前に過度な悲観シナリオを織り込んできただけに“反動調整”は当然の帰結といえよう。

問題は反動調整の持続性と上昇モメンタム形成に向けた市場エネルギーの拡大となってくるが、足元では大勢での“潮目の変化”を示唆するシグナルが出始めている点は見逃せない。

例えば、テクニカル分析に精通するものなら誰しも中長期移動平均線の変化に気づいているはず。 ドル/円の中長期的な売買コストを示す89日平均線は、今月3日に昨年8月以来、約1年ぶりに上向きに転じており、大勢での戻り売り基調から押し目買いへの転換を示唆している。

足元では89日平均線が、NYクローズのサポートとなっており、昨日のNYクローズは昨年7月25日以来、上値を抑え込まれてきた200日平均線を突破している。 これもまた1年ぶりのことである。

“ファンダメンタルズは後から付いてくる”といわれるが、OFHEO(米連邦住宅公社監督局)が昨日発表した5月の住宅価格指数は、前月比▲0.3%(前年比は▲4.8%)と低下が続くなか、太平洋沿岸地域では前月比+0.3%と2007年7月3日以来はじめて上昇している。
 
こうした状況下、米経済に対する過度な悲観論の織り込み進捗を示す象徴がドルの下げ渋りであり、今後の焦点は最悪期脱却を見据えた上昇モメンタム形成の第1弾として、当レポートで繰り返し指摘してきた「米金融政策正常化のタイミング」とすることができよう。

多くのアナリストやエコノミスト等がGSE経営不安問題で大騒ぎしているなかでも、米金融当局者等は緊急避難的な金融政策の正常化を訴え続けている。

FEB内部で影響力を持ち知的「パワーハウス」と呼ばれるサンフラシスコ連銀のイエレン総裁(⇒綺麗なオバちゃん)は、ハト派として知られているが、5月以降はタカ派的な発言が目立っており、7月10日の講演では「インフレは懸念材料だ」とし、FRBは「必要に応じて行動する用意がある」と語っている。

そして、7月16日には、カンザスシティー連銀のホーニグ総裁が、インフレが深刻な問題となるリスクがあるとし、「利上げをあまり遅らせてはならない」との見解を示し、7月19日には、ミネアポリス連銀スターン総裁が「FRBは金融・住宅市場が安定するまで利上げ実施を待つことはできない」との考えを示している。
(ご参考: スターン総裁は前回6月のFOMCで金利据え置きに投票している)

今週に入ってからは、ハバード前米大統領補佐官(経済担当)が、金利を低過ぎる水準に維持することでFRBはインフレ抑制への信認を失いかねないとの見方を示している。(21日付WSJ紙への寄稿)
昨日はFOMCで投票権を持つフィラデルフィア連銀プロッサー総裁が、「たとえ雇用や金融市場が回復する前であっても利上げ開始を余儀なくされる可能性がある」と表明している。
(ご参考: ブロッサー総裁は前回6月のFOMCで金利据え置きに投票している)

同総裁は、金融政策を過度に緩和的かつ長期的に維持することは、個人や企業のインフレ期待を高め、インフレ問題を悪化させる可能性があるとの見方を示し、「インフレ期待の抑制を維持することは、金融当局者が発言を行動で裏付ける必要があることを意味する」としている。

現在のFEDの最重要政策金利であるFFレートの誘導目標は年2.00%であり、これはインフレを考慮すると実質マイナスとなっている。

7月16日に発表された6月の米消費者物価指数は総合ベースで前年比5.0%上昇し、1991年以来の大幅な伸びが示されている。

FFレートの誘導目標はCPIの上昇率を3%下回る水準にあり、さらに米国債の利回りは10年債までの全てがCPIを下回っている。

つまり、インフレ調整後のリターンがマイナスとなることを意味し、米国債への投資意欲を減退させる要因になっている。 当然の帰結として、米国債券市場には金利上昇(=債券売り)圧力が加わることになる。

ここで重要となるのは、制御不能な長期金利の上昇を回避することであり、それはFEDの金融政策に対する信認にかかっている。

昨日のブロッサー総裁の「FRBは利上げを迫られる可能性がある」との発言は、“Behind the curve”(インフレ対応で後手に回る)のリスクを指摘したわけであり、このケースでは必要以上に大幅な利上げを迫られることになる。 そうなれば、米経済へのダメージはより大きくなってこよう。

しかし、筆者が描いている金利正常化は利上げ(⇒引き締め)という捉え方ではなく、制御不能な長期金利の急騰やトリプル安のリスクを回避するという意味合いであり、金利正常化によってドルが堅調となれば、拙速な利上げを遅らせることもできる。
 
実質マイナス金利の正常化によって、むしろ米長期金利が安定することになり、現在の緊急避難的な政策を継続するよりもメリットが多い。

市場の金利観を反映するFFレート先物市場では、金利正常化を織り込む動きが加速しており、年内の利上げを確実視した上で10月のFOMCでの25bpの利上げを94%の確率で織り込んでいることを示している。(⇒現状では12月のFOMCでの50bpの利上げも44%の確率で織り込んでいる)
(ご参考:FFレート先物のデータ入手先 http://www.cbot.com/cbot/pub/page/0,3181,1626,00.html )

ドル/円は、米政策金利の動向に敏感な2年債利回りとパラレルに推移しており、来月5日のFOMCで利上げ票が前回の1票から増える場合には、9月の利上げを織り込む動きとともにドルの上昇モメンタムが形成されることになろう。

繰り返しなるが、金融引き締めではなく、緊急避難的な金融政策の正常化であり、これこそが米ドル高を通じて長期金利の安定や資本増強に奔走する金融機関を側面支援することになろう。

(7月23日 11:20記)

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