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森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

07月18日 11:42 行き過ぎた悲観の揺り戻し

昨日のドル/円は、英FT紙が「一部の政府系ファンド(SWF)によるドル資産離れ」と報じたあと104.76円へ反落したが、追撃売りは見られず、欧州勢参入後はクロス円主導で買いが強まり105円Midへ上昇した。 

このあと105.60円処を巡る攻防が続いたが、JPモルガンの予想を上回る決算やGLOBEX米株価指数先物のプラス転換で105円Highへ急伸、さらに原油先物の大幅続落を受けて107.11
円まで続伸幅を拡大したが、メリルリンチの予想を上回る赤字決算で106円Lowへ引き戻され、NYクローズは106.28円で着地している。

チャートポイントの105.60円処をNYクローズで早期に上回ったことにより、上昇モメンタム形成へ期待をつなぐことができよう。

何より「魔の17日」を無事に通過したことは評価されるが、昨日の買い手掛かりとされたJPモルガンの決算ではプライム層の延滞率上昇で引き当てが積まれるなど、米景気減速の悪影響が表面化し始めており、「魔の17日」は8月以降に後ズレしたとみておく必要があるかもしれない。

いずれにしても、足元では金融株の反発をきっかけに相場の地合いは「株高・原油安・ドル高(円安)」という流れに転じている。

VIX指数も7月15日のザラバで示現した30.81がピークとなり、昨日は25.01まで急降下している。

昨年8月以降の金融危機相場で繰り返されてきた30に到達すると反転(アク抜け)するといった“自律調整”が今回にも見事に当てはまっている。

翌7月16日にはメディアが一斉に市場参加者の悲観的な見方を報じ、センチメントは一気に弱気に傾斜している。 

例えば16日のロイターは、13時30分に「ドル100円割れ観測が再浮上、FRB議長証言でドル売りの流れ確認」という見出しの情報を配信し、「11月の米大統領選を控え、金融市場を取り巻く環境の改善や景気浮揚策などは期待できない」、「この1、2カ月の下値は90円台」とする大手邦銀市場営業部のコメントなどを採り上げていた。

また、16日夕の外為マーケットアイでは、個人投資家のドル/円の建て玉が急増したことに関連して、「今後の急速な円高進展で、大きなやられが出る可能性があるのではないか」(外銀)と個人の円売り姿勢に懸念を示す声が相次いでいる、などと報じている。

結果論ではあるが、積極的にリスクを採った個人投資家に軍配があがっており、「後追い型」の相場観でマーケットに振り回されたのはプロであるはずの外為市場参加者ということになっている。

筆者の16日付けのコメントは前日に続いて「繰り返される金融危機相場(2)」というタイトルを掲げ、「市場が発信するメッセージが米政府・議会の危機意識を一段と強めることになり、これが金融危機の元凶となっている住宅市場の包括的対策の策定につながる」として、上述したロイターのコメントとは全く正反対の見方を示した。 また、バーナンキFRB議長の半期議会証言についても、決してドル安を容認する発言とは捉えることができず、筆者は率直に「当局はインフレリスクを警戒しているな」との印象を持った。

市場では依然として米利上げは困難との見方が圧倒的多数となっているものの、実際に金利上昇リスクを抱える米債券ディラーらの金利観が反映されるFFレート先物市場では、年内の25bpの利上げを116%(=内16%は50bpの利上げ)の確率で織り込んでいることを示している。
(⇒15日時点では68%の確率まで低下していた)

筆者は米金融政策の見通しについて、緊急避難的な金利正常化(=小幅利上げ)こそが景気対策になると考えている。 何故ならば、実質マイナスの政策金利は、景気を浮揚させるメリットよりも、インフレ高進リスクを通じて長期金利の上昇を促し、住宅市場の調整を長引かせ、企業の設備投資を抑制することになる。 また、FEDがインフレ対応で後手に回ったと市場が判断すれば、容赦ない長期金利の急騰とドルの急落を招く恐れがあり、インフレリスクは看過できない問題とすることができよう。

筆者はこの7月16日の20時半から22時過ぎまでセミナー講師を務めたが、ドル不安が高まっているなかで自身の相場観を披露できることの喜びを述べるとともに、参加者に対して(皆さんにとって)有益な情報とはどういうものなかをこの機会に考えて下さいと問題提起させていただいた。
(⇒この日のセミナーではドル/円はMajor Fibonacci retraceの103.69円処が当面のボトムになるとの見方を示したが、実際にはこの手前で反転上昇している。)

お気に入りのTVCMで「結局、将来の自分って今の積み重ねなんだ。目指す自分を手に入れる」(日経ヴェリタス)というのがあるが、不安を煽るような後追い型の相場観に振り回されないためにも、自身の相場観を磨くための努力を生涯学習として継続していきたい。

(7月18日 11:25記)

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