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森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

07月11日 12:54 金融不安解消に向けた体制が整いつつある

翌週に米金融機関の4−6月期決算発表を控えて、財務の健全性に対する懸念や憶測が金融資本市場を揺さ振っている。

こうした動きは四半期ごとに繰り返されてきたイベントリスクであり、金融不安が高まる局面の中でVIX指数(⇒米国株の恐怖心理指数)は25から30超へと急上昇してきた経緯がある。

そして、“悲観の極み”でもある30に到達すると反転(アク抜け)するといった“自律調整”が促されてきた。

足元の米国株は「5月に売り抜けろ」“Sell in May, and go away!”との相場格言通り、5月に戻り高値を示現し、このあと6月としては78年ぶりの大幅な下落に見舞われ、7月初めには“弱気相場”入りしている。

こうした大幅な株価急落でもVIX指数は、7月2日の25.92がこの間のピークであり、今年3月までの株安局面とは様相が異なっている。

その最大の要因として考えられるのはFEDによる“セーフティーネット”が張られていることであり、プライマリーディーラー向けの「緊急貸出制度」の延長も規定路線となりつつある。

また、足元では政策当局が立法権を持つ議会とともに、FRBの権限強化や破たん処理制度の導入など金融安定化に向けて注力しており、狼狽的な不安心理の高まりは制御されているといえよう。 

このため、昨日はポールソン財務長官が議会証言で金融市場の安定には「さらに時間が必要」と述べたほか、バーナンキFRB議長は「金融混乱は続いている」との厳しい認識を示したが、市場は冷静に受け止めている。

そして、渦中にあるファニーメイ(連邦住宅抵当公社)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の財務を巡る懸念については、プール前セントルイス連銀総裁が新たな時価会計を適用した場合、両社とも負債が資産を上回り実質破たん状態にあると述べ市場参加者を驚かせたが、これは不要な混乱回避に向けた苦言と解釈する必要があろう。 両社は、米政府系住宅金融機関として住宅市場と投資家を結ぶ重要な役割を担っており、添付したフローチャートが示すようにこの4月からは投資上限額の撤廃や自己資本規制の緩和措置により金融機関からの住宅ローン債権の買い取り枠が拡大している。

この結果、ファニーメイの4月のモーゲージ購入額はネットで306.6億jとなり、借り換えが活発だった2004年9月以来の高水準で、3月の81億jドルから大幅に増加している。 また、フレディーマックのモーゲージ購入額は368.9億jと前月の186億jから拡大し、総購入額は434.9億jと2003年半ば以来の高水準に達している。 つまり、両社は米住宅市場の救世主的な役割を担う政府の別働隊であり、一部の市場関係者が指摘する懸念は杞憂であるといえよう。

こうした観点からは、むしろ来週15・16日に行われるバーナンキFRB議長の金融政策に関する半期・議会証言に焦点を移していきたい。 (⇒半期に一度の金融政策運営に関する議会証言は、投資戦略を固める重要イベントとして位置付けられており、ドル相場の重要な節目となってきた経緯がある)

米金融政策を巡っては、多くのエコノミスト等は雇用情勢の悪化傾向や年後半の景気失速懸念から利上げができる状況にはないとの見方を示している。

しかし、今週2回講演を行ったサンフラシスコ連銀イエレン総裁(⇒FRB内で影響力を持つ人物)は、積極的な利下げにより成長をめぐる最悪のシナリオは回避されているとしたうえで、金融政策は岐路に近付いているとの認識を繰り返している。

また、8日には来年のFOMCの投票権を持つリッチモンド連銀ラッカー総裁が、米経済成長リスクの低下に合わせて利上げすることは「極めて理にかなう」と発言している。

そして、ミネアポリス連銀スターン総裁が、米紙USAトゥデー(9日付)とのインタビューで、米国内ではインフレリスクが拡大してきており、景気減速以上に脅威となる公算があるとの認識を示している。

エコノミスト等は高度な教育を受けている人物であり、敬意は表すものの、より信頼されるのはマーケットに身を置く債券トレーダー等である。

彼等は、自らが金利変動リスクを抱えているため金融政策に対しては極めて敏感であり、そのヘッジ取引を通じた行動がFFレート先物市場の価格を形成しているのである。 

つまり、FFレート先物市場で形成される“インプライド金利”こそが金融政策を占う真の指標といえよう。

そのインプライド金利は、景気先行き不透明感や大幅な株安下でも年内の25bpの利上げを100%超の確率で織り込んでいることを示している。

現在の政策金利の誘導目標は年2.00%であり、物価上昇率を勘案した実質ではマイナス金利の状態にある。 エコノミスト等の指摘通りに景気配慮で現行の政策金利を維持した場合、一段のドル安とエネルギー価格の高騰がGDPの7割を占める個人消費や企業の設備投資を圧迫することになり、むしろ逆効果となってくる。 また、市場が“Behind the curve”(インフレ対応で後手に回る)と判断すれば、容赦ない長期金利の急騰とドルの急落を招くリスクを高めることになる。

過去の米株式・債券・ドルがトリプル安に見舞われた局面の多くは、米長期金利の上昇が引き金となっており、グローバル・インフレの脅威が高まっている状況下では緊急避難的な金融政策の正常化こそが急務といえ、来週の半期・議会証言では“地ならし”が行われるとみておきたい。 現状では利上げ懐疑派が大勢であるため、米ドルの買い戻しを促すリスクイベントと位置付けることができよう。

(7月11日 11:25記)

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