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森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

07月09日 12:10 米ドルは不気味な底堅さを堅持!?

昨日のドル/円は、日本株およびアジア株の下落に続いて欧州株が大幅安で寄り付いたことで、リスク回避をテーマとする円買い戻しに拍車が掛かり、一時106.25円まで急落した。
 
ちょうど日足-基準線の106.23円処で下げ止まり、このあとバーナンキFRB議長がプライマリーディーラー向け緊急貸出制度の延長の可能性に言及したことでドル買い戻しに弾みが付く格好となった。

緊急貸出制度(TSLF・PDCF)は、預金を取り扱わない証券会社などを対象にした非伝統的“流動性供給対策”であり、3月のベアー社の実質破たんが資本不足ではなく流動性不足であったため、この連銀窓口貸出によって対応可能と判断された。

但し、住宅ローン担保証券(価値が不明確)などを担保とする劇薬の側面も有すため、適用期間が9月までと区切られていたが、先月半ばからポールソン財務長官やコーンFRB副議長らが一定の条件(⇒モラルハザード回避)の下で機能拡大や延長を検討しているとし、議会対策としての“地ならし”がなされていた経緯がある。

このタイミングでバーナンキ議長が緊急貸出制度の期間延長の可能性に言及したのは、金融政策について半期に一度の議会証言を来週7月15日に行うためであると考えることができる。

FRB議長による半期(2月と7月)に一度の金融政策運営に関する議会証言は、世界中のファンドマネジャーらが投資戦略を見直す重要イベントとして位置付けられており、為替マーケットにおいてはドル相場の重要な節目となってきた。

今年2月の議会証言では、政策総動員としての「ドル安」志向が前面に打ち出され、このあとドルの総合的な実力を示すFRB算出の実効為替相場は昨年11月の安値をブレイクして史上最安値を更新するに至った。

FEDによる大胆な利下げと広範なドル安により米1−3月期GDP確報値は、前期比年率+1.0%と、昨年10−12月期の同+0.6%を上回り、大方のエコノミスト等が指摘したマイナス成長を回避する格好となっている。

そして、5月以降は政策当局者等が講演やメディアを通じてドルのトークアップを連発、ブッシュ大統領も「強いドル政策」を繰り返すなど、3月までの“悪意なきドル安放置”から様変わりしている。

とはいえ、ポリシー・ミックスの観点からは、超緩和的(実質金利はマイナス)な金融政策と積極財政(戻し減税)は通貨安を導く組合せであり、政策的には持続不可能となってくる。

そこで、先月から地ならしが行われてきたプライマリーディーラー向けの「緊急貸出制度」が議会の反発を招くことなく延長されることになれば、FEDの金融政策と切り離すことが可能となってくる。

つまり、「連銀貸出制度」が金融安定化策の位置付けとなり、マクロ安定化策は大幅利下げの累積効果が表面化し始めるため、金融政策の軸足をインフレ抑止へシフトさせることができる。

これは金融引き締めではなく、実質マイナス金利の正常化であり、インフレが脅威となる状況下では超緩和的な政策を継続する場合と比較して米経済にとってはプラスとなってくる。 

こうした観点からは、7月15日の金融政策についての半期証言が大きな転機となる可能性を秘めているといえよう。

今週明けにはサンフラシスコ連銀イエレン総裁(⇒FRB内部で影響力を持つ知的「パワーハウス」と呼ばれている4名のうちの1名)は“ハト派”寄りとして知られているが、同氏は積極的な利下げにより成長をめぐる最悪のシナリオは回避されているとしたうえで、金融政策は岐路に近付いているとの認識を示している。

そして、昨日は来年のFOMCの投票権を持つリッチモンド連銀ラッカー総裁が、米経済成長リスクの低下に合わせて利上げすることは「極めて理にかなう」と発言している。

米経済を取り巻く環境は、ポールソン財務長官が懸念を示すように「エネルギー価格高騰」、「資本市場の混乱」、「長引く住宅価格低迷」といった3つの逆風にさらされているものの、足元のドルは不気味な底堅さを維持しており、“潮目の変化”を示唆するものといえるかもしれない。

(7月9日 11:35記)

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