コンテンツへ

森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

07月03日 12:16 ドル先安感も俄かに広がる警戒ムード

「原油先物の最高値更新、米雇用情勢の悪化、米金利先高観の後退、NYダウの弱気相場入り、投資家心理の急激な悪化」―――米景気悲観論が急速に高まるなかで本日は1年ぶりの利上げが確実視されるECB理事会と6ヶ月連続の雇用減少が予想される米6月雇用統計が発表される。

現在の米ドルにとっては最悪の組合せであり、市場ではドル急落に対する警戒感が高まっている。
米6月雇用統計については、5月統計でネガティブ・サプライズとなった失業率(変動の激しい若年層の失業率の急上昇が一因)が0.1ポイント改善の5.4%が見込まれている。

しかし、より注目度の高いNFP(非農業部門雇用者数)は、昨日発表されたADP全米雇用報告で7万9千人の民間部門雇用者の減少が示されたため、当初予想されていた6万人の減少から下振れ(悪化)するとの見方が浮上している。 雇用統計は遅行指標であり、金融機関を中心とするリストラ強化により民間部門での減少は免れず、NFPの減少幅は政府部門の伸びにかかっている。

米雇用動向を最も良く映す失業保険申請件数の4週間移動平均は、6月の雇用統計に反映される06/21時点で37万9千人と足元の景気減速局面では最悪となっている。

また、6月ISM製造業景気指数を構成する「雇用指数」は43.7と前月の45.5から低下し2003年5月以来の水準に落ち込んでおり、NFPは改善の前に一段の悪化を示す可能性が高いといえよう。

こうした雇用情勢の悪化は、米景気後退懸念の増幅を通じて「株安⇒ドル安」といった連想売りを誘いかねず、米市場3連休前の持ち高調整やリスク回避に拍車を掛ける可能性も否定できない。

加えて、もう一つの重要イベントであるECB理事会では25bpの利上げが確実視され、注目のトリシェ総裁の記者会見ではインフレ警戒姿勢が堅持されるとみられている。 それもそのはずECBは通貨統合の憲法と位置づけられるマーストリヒト条約で「中期的な物価安定の実現」を唯一の政策目標として要請されており、足元の物価上昇を黙認すればECBの信認を失墜につながりかねない。

ECBのインフレ誘導目標は2%に限りなく近い1%台とされているが、ユーロ圏消費者物価指数(EU基準)は、昨年9月から10ヶ月連続で上昇し、最新データとなる6月は前年比+4.0%とユーロ発足来の最高水準へ跳ね上がっている。 

昨日、トリシェ総裁は独週刊紙ツァイトとのインタビューで、中央銀行が断固として行動しなければインフレが「爆発的」に加速するリスクがあると語っていたが、現状は景気を犠牲にしてでも利上げを行わなければならない局面に追い詰められているといえよう。

事実、今週発表された6月のユーロ圏製造業PMI景気指数は速報値から0.1ポイント改善したものの、2005年6月以来3年ぶりに50を割り込んでおり、4ヶ月ぶりに50を回復した米ISM製造業景気指数とは景況感の方向性が正反対となっている。

企業景況感の悪化は株価にも顕著に現れており、米欧主要株価の年初来の下落率は仏CAC40が▲23.47%、独DAXが▲21.84%、英FT100が▲15.96%、NYダウが▲15.45%、NASDAQが▲15.11%で、欧州株が米国株の下落率を大きく上回っている。

こうした状況下での利上げはユーロ圏の財務相らが「金利が経済に与える影響を考慮すべき(独財務相)」と懸念を表明するように景気腰折れリスクを孕むものであり、成長期待とユーロ高を背景に流入した米系マネーが流出(母国回帰)するシナリオを描くこともできよう。 つまり、「ECB利上げ=ユーロ高」ではなく、投資マネーのリスク回避を促す可能性に留意したい。

加えて、ポールソン米財務長官が先月半ばの大阪G8財務相会合から3週間もたたないタイミングで欧州要人を訪ねていることや、ブッシュ大統領が強いドル政策を堅持する姿勢を改めて表明していることは、ドル売りを目論む思惑筋に対する強い抑止力になるといえるかもしれない。

今週初め、ウォール街では「米政府は為替介入に踏み切るのではないか」との観測が流れていたと日経新聞夕刊「米国市場ラウンドアップ」で取り上げていたが、原油価格高騰によるグローバル・インフレの脅威、そして世界同時株安など、元を辿ればドル安に行き着く。 一段のドル安が世界経済のリスク要因としてコンセンサスが形成されれば、市場介入が正当化される可能性は否定できない。

筆者は介入懐疑の立場ではあるものの、介入に対する警戒ムードが浮上していることが、不要な混乱を回避する抑止力となっているのかもしれない。

(7月3日 11:40記)

画像入りPDFファイル



>>FXのTOPへ

プライバシーマーク

0120-04-2424
平日 8:00〜18:00
携帯サイト http://trds.jp/

Copyright © 2008 Traders Securities Co., Ltd. All Rights Reserved.