
アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。
|
週明けの為替マーケットは、欧州序盤にドル安が加速する場面がみられたが、ポールソン米財務長官が訪問先のロシアで「強いドルは良いことで米国の利益と確信している」と述べたことや温家宝中国首相がライス米国務長官との会談で「ドルの安定」を要請したことが、テクニカルなドル買い戻しを後押しする格好となった。
ドル/円は、ムーディーズが日本国債の格付けを通常の変更プロセスを経ずにいきなり1段階引き上げたため、サプライズ的な円買いが持ち込まれる格好となった。 特に今回は「A1」(シングルA格)から「Aa3」(ダブルA格)への引き上げであり、シングルA格を投資対象から外すケースが多い海外中銀や年金基金などが円資産を長期ポートフォリオに組み込むとの連想が働いたとしても不思議ではない。
(⇒超低金利の円は、金利面でのアドバンテージを持たないが、グローバル・インフレが世界経済の脅威として警戒される状況下では非難通貨として買われる可能性が生じてこよう)
ドル/円は、欧州序盤に105.50〜66円処のサポートエリアが破られ、一気に104.99円まで急落したが、Fibonacci retraceの104.89円処(=61.8% of 102.61⇒108.59)の手前で下げ止まり、このあと106.26円まで反発している。
ここで注目したいのは、この日の足型が“長い下ヒゲ”(突っ込みのあと急速に切り返す)を残す「たくり線」となっていることであり、日柄面ではチャート上の重要な戻り高値105.70円(05/02)から「一期二節」(42日目)の節目で示現した安値となり、当面の重要な押し目となる条件が揃っている。
ユーロ/ドルについては、6月のユーロ圏消費者物価指数の上振れを見込んだ買い仕掛けで1.5836jまで急伸したが、指標発表後は「噂で買って事実で売り」のセオリー通り、1.5731jまで急落している。
この日の高値1.5836jは、波動目標の1.5837j処(=1.5303+【1.5285⇒1.5819】)に応答する高値でもあり、1.5850j処のオプション防戦売りが波動上の達成感と相俟って奏効したとみることもできよう。
とはいえ、米ドルを取り巻く環境は、@年後半の景気失速懸念、A住宅市場の調整長期化、B金融セクターの健全性を巡る懸念、C原油価格高騰を背景とするインフレ高進リスク、―――など悪材料が山積しており、ドルに対するセンチメントを弱気に傾斜させている。
特に今週は米国経済の重要指標の発表が相次ぐほか、ユーロ圏では利上げ確実視されるECB理事会が開催される予定となっている。 最近では東京タイム午後終盤から欧州序盤にかけて思惑的なドル売り仕掛けがみられており、ドル下落に対する警戒は怠れない状況にある。
本日は米国経済の重要先行指標であるISM製造業景気指数が発表されるほか、落ち込みの加速が警戒される新車販売が発表される。 先週は米自動車最大手ゼネラルモーターズの投資判断が「売り」へ引き下げられたことや、米自動車3位のクライスラーが連邦破産法11条の適用申請を余儀なくされるとの噂が株安に拍車を掛ける一因となっていただけに、6月の新車販売統計は要注意となる。
もっとも、ドルと米国経済の関係では、景気が好調な局面ではドル安が進展しやすく、意外にも景気低迷期や金融危機的な局面ではむしろドル高となる傾向が多い。 これは、世界各国で事業を展開する米多国籍企業(=海外収益比率が高い)や米系マネーのフローが影響しているものとみられ、景気低迷期は資本の本国回帰により“リパトリによるドル高”と解釈されている。
また、米国の通貨政策との関係も軽視することはできず、金融資本市場が緊張状態にある局面やインフレが軽視できない状況では、ドル高志向を強める傾向にある。 それ以外の局面では、経常不均衡の是正や米多国籍企業の支援にもなる“悪意なきドル安放置”(=「ビナインネグレクト」)となっている。
本日は、ポールソン米財務長官がフランクフルトのECB本部を訪問し、トリシェ総裁と会談する予定となっている。 ECB理事会開催前というタイミングでもあり、会談内容は明らかにされない可能性があるものの、ドル不安が高まっている状況下だけに米欧通貨当局のトップ会談は、それ自体が不要な混乱回避に向けた抑止力になるといえよう。
(7月1日 11:35記)