
アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。
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昨日の為替マーケットは、アジアタイムではシンガポール金融通貨庁による実質的な通貨切り上げや人民元の10年来高値更新(対ドル相場)を引き金とするアジア通貨高の流れで日本円にも連れ高圧力が掛かる格好となった。
(⇒アジア通貨高は「地球温暖化」解消に向けた排出権市場への参入に伴うインフレ圧力からも中期的な市場テーマとなってくる。)
そして、欧州タイムではMPC(英中銀金融政策委員会)に向けた思惑先行の扇動相場で英ポンド主導でクロス円の売りに拍車が掛かかり、ドル/円は一時100.03円まで下落した。
NYタイムでは、注目の米新規失業保険申請者件数(04/05迄の週)が35.7万件と、前週から5.3万件の大幅な改善(減少)を示したことや、2月貿易統計で一般消費財の輸入が拡大していたことから、米経済は底堅いとの前向きな反応(?)から米主要3株価指数の反発と同時にクロス円に猛烈な買い戻しが入った。
新規失業保険申請者件数については、米雇用市場の基調をより正確に示すとされる4週間移動平均は、むしろ悪化(増加)しているため、ドル反発を受けた後講釈の感は否めない。
筆者が注目したのは、昨日NY連銀が実施したTSLF(=MBSなどを担保に国債をプライマリーディーラーに4週間貸し出す制度)であり、応札額が募集額に達しなかったことが、“信用市場の緊張緩和”の兆候と解釈され、クロス円全般の買い戻しにつながったと解釈している。
(ちょっと解説:TSLFは、ひっ迫した信用状況の緩和を目指すFRBの流動性供給策の一環で3月27日から毎週1回実施されている。)
NY連銀は4月9日にTSLFの入札規模を500億j(前週の2倍)に設定していたため、資金繰り不安が根強いと警戒されていたが、10日の入札額は339.5億jで応札倍率(需要を測る指標)は0.68倍と初めて1倍を下回った。
但し、右グラフが示すように足元では資産担保コマーシャル・ペーパー市場が事実上の機能不全状態にあり、FRBが“ケチャップにお金を貸す”プライマリーディーラー向け連銀窓口貸出制度(PDCF)が活発に利用されており、必ずしも信用状況が緩和しているわけではないことを示している。
こうした観点からは、ワシントンG7前の持ち高調整と捉えておく必要があるかもしれない。
ワシントンG7で目玉となるのが、FSF(金融安定化フォーラム)の最終報告書であり、その提言で短期的な対策として当局が力点を置いているのが「透明性・価格評価の強化」となっている。
つまり、世界の金融機関に対して2008年中間期までに保有資産のリスクを完全かつ迅速な情報開示を求めるものであり、これまで抑え込まれてきた損失が表面化する可能性もあり、金融市場に一時的な緊張が高まる局面も想定されよう。 また、価格評価の強化によって金融機関のバランスシートに対する圧力が強まる場合には、貸出抑制や資金引き揚げなどを通じて個人消費や企業の投資行動に悪影響を与えるほか、ヘッジファンドなどのデ・レバレッジ(テコの解消)を加速させるリスクも生じるため、米欧中銀による流動性供給策が引き続き重要な役割を担うことになる。
FASの提言の中には、昨日の当レポートで取り上げた「新BIS規制バーゼルU(右資料を参照)」の自己資本比率規制の適用を一時的に緩める“劇薬”を盛り込まなかったことから、政策当局は厳しい道を選択したとの解釈になってくる。
日本はサブプライムローン問題の影響をほとんど受けていないため、日銀は米欧中銀による協調的な流動性供給策には参加していない。 しかし、こうした状況下で生じる金融資本市場の緊張が急激な円高を伴ってきた経緯があるだけに、額賀財務相は公的資金による資本注入なども検討すべきと提案する見通しと報じられている。
公的資金待望論は市場参加者の一部にも燻っているが、そもそも公的資金投入の前提は、(1)金融・社会・経済上不可欠であるとのコンセンサスが形成されること、(2)混乱を引き起こした責任者の刑事罰を追求すること、(3)当該金融機関には厳格なリストラを促し、公的資金の投入額を最小に留めること―――が重要であり、今回のワシントンG7はその前段階の「透明性・価格評価の強化」と位置付けることができよう。
あくまで公的資金はシステミックリスク回避の“最後手段”と捉えておく必要があり、「透明性・価格評価の強化」の過程で想定される“金融市場の緊張”や“大規模な金融再編”が新たな市場テーマとすることができよう。
尚、NY連銀が今朝公表した「カストディ・アカウント」(海外の中央銀行から預かる米債・政府機関債の残高)は4月9日時点で1兆3,208億jとなり、前週から145億jの資金流入があったことを示している。
今年1月9日時点(1兆2,331億j)からは877億jの資金が米国債を購入するために流入していることを示しており、バーナンキFRB議長が議会証言で述べた通り公的機関のドル離れは起きておらず、ドル安が政策的に問題視される状況には至っていないと捉えることができよう。
(4月11日 11:20記)