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森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

04月09日 12:15 警戒されるコラテラル・ダメージ!?

先月後半からの市場のメインテーマは、信用収縮問題の早期収束期待と米利下げ最終局面入り観測を背景とするリスク回避からの揺り戻しであり、世界的な株高や国際商品相場の上昇と歩調を合わせ高金利資源国通貨買い・ファンディング通貨売り(円やスイスフラン)が促される展開となった。

筆者はこうした楽観シナリオに基づく現状をモラトリアム(猶予期間)相場と位置付け、持続性が焦点になるとみてきた。

ところが足元では、@米3月雇用統計の大幅な悪化、A1−3月期米企業決算の芳しくないスタート、B米貯蓄・貸付組合最大手ワシントン・ミューチュアルの追加損失に伴う減配、CIMF「世界金融安定性報告」が示した世界の金融機関の巨額損失額(約9,450億j)、D3月FOMC議事録で住宅・金融市場の緊張が深刻な景気低迷につながる可能性に懸念が表明されていた―――ことなど、楽観シナリオの前提を揺るがす悪材料が相次いでいるにもかかわらず市場の反応が限定的となっている。

米国株の代表的な投資家センチメント・インディケーターであるVIX指数(別名「恐怖指数」)も03/17が“悲観の局地”となって低下(改善)し続けており、悪材料の織り込み進捗を示唆する動きとなっている。

こうした状況下、ドルの総合的な実力を示すFRB算出の実効為替相場は2日続伸で、21日平均線は下向きから横向きへと転じている。

これはドルの底堅さを示唆する重要シグナルの一つであり、21日平均線が上向きとなる局面では一段の上昇が想定されることになる。

モラトリアム相場は次にどういう展開を描こうとしているのか?

ここで注目されるのは、ハリファックスが昨日発表した3月の英住宅価格指数が前月比▲2.5%と1992年9月以来の大幅な下落を示したことである。 下落幅は事前予想の6倍以上というネガティブ・サプライズであり、今回のMPC(英中銀金融政策委員会)での50bpの大幅利下げ観測の浮上が猛烈な英ポンド売りを誘発している。 市場では、米経済の減速が他の国や地域にも波及し、各中銀が利下げを迫られるとの見方が指摘されていたが、コラテラル・ダメージ(巻き添え)が警戒され始める局面かもしれない。

右表は、1970年以降で日米欧が同時利上げした局面を示したものであり、2006年3月からの利上げ局面を含めると5回存在している。 こうした同時引き締めは、金融危機や世界経済に悪影響を与え、いずれも短命に終わっている。

そして、過去4回の引き締め局面のうち3回は、先行利上げした米国の金融緩和で幕引きしているのである。

今回の2006年3月の米利上げを起点とする引き締め局面では、ECBが2005年12月に利上げを開始し、日銀が2006年3月に量的緩和政策の解除した時点で足並みが揃った。 ところが、FEDは2006年6月で利上げを打ち止めし、2007年9月から大幅な利下げに踏み切っている。
(この間の累積利下げ幅は300bpにも達している)

これに対してECBは2007年6月の利上げを最後に据え置いているものの、インフレ警戒姿勢により市場の利下げ期待をけん制する格好となっている。

IMFは「2008年・世界経済見通し(04/09発表)」に向けてまとめたリポートの中で、「住宅ブームを経験した欧州諸国の一部は住宅価格の急速な下落に直面する可能性があり、金融政策当局は不動産市場の動向を重要な経済指標として扱うべきだ」と指摘している。 同リポートによれば、アイルランド、オランダ、英国で特に「説明のつかない住宅価格上昇」がみられ、2007年までの10年間に経済ファンダメンタルズに基づいた妥当な価格を30%上回る水準まで上昇したと警告している。 (⇒フランス、スペインなどは、この格差が20%程度としている。)

ファンダメンタルズを逸脱した価格の上昇は住宅バブルであり、ECBも米国や英国に追随する形で利下げに追い込まれることになろう。

問題は市場がどの時点でこうしたシナリオを織り込み始めるかであり、本日発表されるIMF「2008年・世界経済見通し」や明日のECB定例理事会でのトリシェ総裁の会見に向けて思惑が高まりそうだ。

特にユーロ圏の住宅ブームには、超低金利の円建てローンが積極的に活用されてきただけに、円高波乱の火種として念頭に置いておきたい。 

(4月9日 11:50記)

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