
欧州勢が本格復帰した昨日の為替マーケットは、米経済指標の悪化と地政学リスクによりドルが全面安となり、ドルの総合的な実力を示すFRB算出の実効為替相場は5日続落で11/26以来22営業日ぶりに21日平均線を下回っている。
まず、米新規失業保険申請者件数は、12/22までの週に34.9万件に上昇し、米雇用市場の基調をより正確に示すとされる4週間移動平均は34.25万件と雇用拡大の分岐点とされる30万件を大幅に上回っている。 これにより、来年01/04発表の12月雇用統計の悪化を懸念させる格好となっている。
また11月の米耐久財受注では、設備投資の先行指標となる「民間航空機を除く非国防資本財」の受注が前月比▲0.4%と2ヶ月連続のマイナスとなり、米景気減速を懸念させる内容となっている。
このあとコンファレンスボードが発表した12月の米消費者信頼感指数は、前月の87.8から88.6へ上昇したが、引き続き低水準に位置しておりドル買いを促す手掛かり材料とはならなかった。
それよりも、パキスタンのブット元首相の暗殺を受けた地政学的リスク(⇒核保有国における政情不安は極めて深刻な事態)が市場を支配する格好となり、“Flight to safety”(安全志向)から金やスイスフランなどが買われ、ドル売りを加速させた。
ブット元首相は親米派であっただけにブッシュ政権に与えるダメージは大きく、地政学的な不確実性が積極的なリスクテイクを抑制する可能性が生じてくる。 膨大な経常赤字を抱える米国にとって、海外からの潤沢な投資マネーの流入は不可欠であり、潜在的なドル安要因となってくる。
加えて、地政学的リスクは恒常的な原油高の要因ともなり、インフレリスクへの警戒からFEDの金融政策を縛りかねず、実体経済への影響が今後の懸念材料となってくる。
米ドルにとっては、いずれもネガティブな材料であり、“持続的なドル上昇”が見込みづらくなっている点は念頭に置いておきたい。
さて、今年も残すところ本日を含めて2営業日となり、市場の関心は2008年の相場展開に向けられている。 2007年は年初のレポートで「亥年」の特徴として、@天変地異の発生、A大きなテーマ相場の存在、B為替関連での大きな出来事―――の3つを挙げたが、結果的にアンラッキー7の10年毎に繰り返される金融危機に見舞われた“波乱の年”でもあった。
こうした「波乱」に伴う“ボラティリティーの増幅”を売買チャンスと捉えることができるのは少数派であり、多数派は想定外の値動きに翻弄されて強制決済という結末を迎える。これはサブプライム・ショックを受けた米金融機関も同様であり、プロ集団であったはずの大手投資銀行が軒並み膨大な評価損を抱え、自己資本毀損という事態に直面したのである。(ゴールドマン・サックスはショート戦略により過去最高益を計上)
ここでの教訓は「リスク管理」と「先見性」の重要性であり、2008年は「七転び八起き」で大きく起き上がる年にしていきたい。
筆者は情報発信者として心掛けてきたことは、目先的な売買ストラテジーの提供ではなく、相場の流れを捉え潮目の変化を見逃さないために「市場のテーマや注目点」に重心を置いた相場分析であった。
また、セミナーでは新たに「行動ファイナンス論(心理学)」を取り入れ、誰しも陥りやすい不合理な投資行動などについて個人投資家さんと一緒に学んできた。
行動ファイナンス論については、実際のトレーディングにおいて有益であることは周知の事実であるが、筆者においては情報発信者の心構えとしても極めて有益であることを再認識することができた。
「市場は常に新しい材料を次々と消化しながら新たな均衡点を求めて動いている」―――これは当レポートで何度も掲げた文章であるが、“情報発信者は自身の相場観に固執するな”との自身に対する戒めでもあった。 分析精度の向上はもちろんのこと、市場が発信してくれるサインを見逃さないよう引き続き努力していきたい。 本年も1年間ありがとうございました。
(12月28日 11:40記)
尚、次回発行は1月4日となります。
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