
アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。
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欧米金融機関によるサブプライムローン関連の評価損計上が相次ぐなか、悪材料出尽くしと評価する向きは少数派で、むしろ年末越えの資金需給ひっ迫という季節要因も手伝って一段の信用収縮への警戒を強めている。
主要通貨のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は、年末越えとなるドル、ポンド、ユーロの2ヶ月物金利が軒並み上昇、NY連銀は貸出金利の上昇抑制に向け、合計472.5億jの資金供給(⇒1日としては同時多発テロが発生した2001年9月以来の大規模な供給)を行っている。
季節的な資金需給ひっ迫要因が、信用不安を増幅する方向に働いているのである。
加えて、米銀5位のウェルズ・ファーゴが「現在の米住宅市場は世界大恐慌以来最悪の状況にある」との認識を示したことや、カンザスシティ連銀ホーニング総裁が「現在の住宅市場の低迷は90年代前半に匹敵する」との見方を示したことが、米景気の先行き不安を増幅する格好となり、米債券市場では政策金利の動向に敏感な2年債が3.3167%とFFレートの4.50%を1.1833%も下回る水準へ急低下している。
10年債との利回り格差は0.937%に急拡大し、イールドカーブ(利回り曲線)の「ブル・スティープニング」(=短期金利低下幅>長期金利低下幅)に拍車を掛けており、米景気リセッション入りのリスクと大幅利下げを織り込み始めている。
米株式市場では主要3株価指数が揃って続落、NYダウは今月に入ってからの下げ幅が820j(終値ベースで8.42%)に達している。
NYダウは、月間ベースでは8月から10月まで3ヶ月連続で上昇、この間の上げ幅は合計718jであり、昨日の下落によって過去3ヶ月分の上昇幅を全て吐き出す格好となっている。
添付したフローチャート「米投資マネーの流れ」が示すように、米国株が下落局面にある状況下ではリスクマネー収縮に伴い米投資マネーが本国回帰(リパトリエーション)する傾向にあり、為替市場ではドル高が促されることになる。
昨日はドルが円を除く主要通貨に対してほぼ全面高の展開となり、ドルの総合的な実力を示すFRB算出の実効為替相場(対主要通貨ベース)も11月7日に更新した史上最安値71.11をボトムにして昨日まで5日続伸(⇒本日にも21日平均線を上抜く見込み?)している。
一方、グローバルな投資マネーは信用収縮懸念を背景とする世界的な株安でリスク回避志向を強めており、手仕舞い相場が円キャリー巻き戻しに伴う円高と質への逃避による米国債への資金シフト(⇒ドル高)を促していると解釈することができよう。
毎週木曜日にNY連銀が公表する「カストディ・アカウント」(海外の中央銀行から預かる米債・政府機関債の残高)は、9月12日までの週がボトムとなり、着実に残高が積み上がっていることを示している。 (政府保証債の残高を含めると553.12億j増加している。)
本日は、全世界から米国への長期資本流入(償還期間が1年を超える財務省証券、政府機関債、社債および株式投資を通じた資本流入)を示すTIC(対米証券投資状況)の9月分が米財務省から公表される。
ここでの注目点は、8月に売り越しに転じた民間部門が継続的に売り越しているかという点と、積極的な対外投資(=資金流出)を行ってきた米国投資家の動向とすることができよう。
前者については、8月の海外勢による売り越しがサブプライム・ショックを受けた一時的な要因であったかどうかを見極める手掛かりとなるほか、ドル安進行に伴うドル建て資産の割安感や安全資産としての観点から長期的な資金シフトが促されているかどうかに注目したい。
足元では、NY原油先物がこの4営業日のうち3営業日で下げているほか、NY金は質への逃避買いはみられず大幅な下落率を伴って急反落している。
国際商品相場は、世界的な過剰流動性(カネ余り)を背景に騰勢を維持してきたが、こうしたマネーフローに変調が生じている可能性を示唆する動きかもしれない。
13日のレポートでは、「11月の季節性は“収穫の秋”をテーマとする米感謝祭(第4木曜日)に向けた利益確定のドル買い戻し」を取り上げたが、グローバル投資を行ってきた米国投資家は世界的な株高とドル安進行という二重の値上がり益(キャピタルゲイン)を有していることになる。
大きく実った収益を刈り取る手仕舞い相場の本格到来を念頭に置いておきたい。
この場合、ドルは円を除く主要通貨に対して全面的に買い戻され、円は非ドル通貨の下落に伴うクロスベースの円高圧力を受ける可能性に注意したい。
(11月16日 11:20記)