
悪材料を黙止して堅調を維持してきた世界の主要株価指数も、想定以上に悪化する現実の数字を目の当たりにして全面安の展開となった。
それでもNYダウ以外は年初からのプラス圏を維持しており、円の対主要通貨相場も上向きに転じた21日平均線をサポートに押し目買い基調が維持されている。(⇒つまり21日平均線がNYクローズで破られない限り、押し目買い基調が続くという解釈)
この日は12月のADP全米雇用報告・民間雇用者数が前月比69.3万人減少と統計開始以来で最大の落ち込みとなり、11月分も当初の25万人減から47.6万人減へ大幅に下方修正されたため、ネガティブ・サプライズとなった。
市場の反応が大きかった背景には、今回の統計から労働省が発表するNFP(非農業部門雇用者数)を正確に予測できるように新たな調査方法が導入されたためであり、明日発表される12月雇用統計に対する警戒感が一気に高められてしまった。
明日の雇用統計の大幅悪化に対する免疫ができたとの解釈もできるが、雇用情勢をより正確に反映する新規失業保険申請者件数の4週間移動平均が恒常的に55万件を上回っている状況下では持続的な買い材料とはなりえない。
また、この日は半導体大手インテルの2008年10−12月期売上見通しの下方修正やアルミ生産大手アルコアの人員削減および減産発表など、ネガティブな材料が相次いでおり、オバマ次期政権による大規模景気対策に対する楽観論に冷や水を浴びせる格好となっている。
オバマ次期大統領は、本日の日本時間9日午前1時から経済・景気刺激策について演説を行う予定となっており、市場の反応が改めて注目されよう。
こうした状況下、筆者が重視したのは昨日の米市場が株安・ドル安・債券安(金利は上昇)のトリプル安となったことである。 昨年末までは、米景気に対する悪材料は「質への逃避」的な債券買いを誘い、米長期金利の歴史的な低下を促してきたが、債券市場の潮目が変わりつつあるといえよう。
米議会予算局(CBO)が昨日発表した2009年度(08年10月〜09年9月)財政見通しが1兆1,860億jの赤字と、オバマ次期政権による景気対策を反映しない時点で過去最大であった2008年度の赤字4,548億jの2.6倍に膨張(対GDPでは8.3%)し、過去最悪となることが明らかになっている。
米議会予算局によれば、財政赤字は2010年度には7,030億jに縮小するとの見通しを示しているが、誰が膨大な債務国の米国債を買うのだろうか?
(⇒FRBが禁じ手の米国債買い入れを検討しているほか、市場では「オバマボンド構想」が浮上している)
1月6日付け当リポートでは、筆者の2009年のサプライズ予測の一つとして「米国債の格下げ」を紹介し、これが実現しなくても市場テーマに浮上するだけで米長期金利に上昇圧力が加わり、トリプル安(ドル安・株安・債券安)のリスクが高まる点に留意する必要が生じるとの見方を示した。
仮に筆者が米国債の購入を検討する場合は、米ドルが現状よりも一段と下落し、米国債利回りが少なくとも4%以上(⇒1月7日時点の10年債利回りは2.495%、30年債は同3.04%)へ上昇しない限り、控えることになる。
昨日実施された米3年債入札の結果によれば、投資家の需要を測る指標の応札倍率は2.21倍と、過去10回の入札の平均である2.41倍を下回っている。 本日8日には160億ドルの10年債入札が実施されるが、大量国債発行という需給悪の中ではやはり利回りの上昇とドル安が不可避となってこよう。
唯一の買い手となってきたのは外国政府・中央銀行であり、毎週木曜日にNY連銀が公表する「カストディ・アカウント」(海外の中央銀行から預かる米債・政府機関債の残高)は、米国発の幾多の金融ショック後も一貫して積み上げられてきた。
しかし、昨年7月半ばのGSE(米政府系住宅金融機関)ショック以降は、米政府機関債が一環して売り込まれるなど選別の動きが加速しており、本日発表されるカストディ・アカウント(外国政府代理勘定)の増減は波乱要因の一つとして注目したい。
カストディ・アカウント(外国政府代理勘定)のデータ入手先のアドレスはこちらです。
尚、本日はMPC(英中銀金融政策委員会)が開催されるが、市場は50bpの追加利下げを織り込んでおり、利下げ幅が拡大しない限り、ポンド買い戻しの動きが継続するものとみておきたい。
(1月8日 11:00記)